成年後見制度とは
成年後見制度とは、認知症・知的障害・精神障害などの理由により判断能力が不十分となった人が、財産管理や契約で不利益をこうむったり、人間としての尊厳がそこなわれたりすることのないように、主に法律面で支援する制度です。
こんな人は制度の利用を考えましょう
今は元気でも将来に不安がある人や、今すぐにでも支援を必要としている人など、さまざまなケースで成年後見制度は活用できます。自分や家族などの状況を見直し、以下のような場合などは、制度の利用を検討してみましょう。
Case 1
最近もの忘れがひどくなってきたので、財産管理などが不安になった
Case 4
認知症で施設に入所した父の財産を処分して入所の費用にあてたい。
Case 2
脳梗塞で倒れた父の代わりに、経営しているマンションを管理したい。
Case 5
今は元気だが、将来的に認知症になるなどの不安がある。
Case 3
認知症でひとり暮らしの母を悪質商法から守りたい。
Case 6
自分たち親がいなくなったあと、知的障害のある子どもの将来が不安。
成年後見制度を利用した事例
01
後見事例
認知症の夫に代わり妻が相続放棄
○ 本人の状況:認知症
○申立て人:妻 ○後見人:妻
本人は5年ほど前からもの忘れがひどくなり、勤務先の直属の部下や家族の判別もつかなくなって2年前から入院していました。ある日、本人の弟が事故で亡くなり、本人が弟の財産を相続することになりましたが、弟には負債しかなく、困った本人の妻は相続放棄の手続をとりたいと考えました。
本人の妻は後見開始の申立てを行い、家庭裁判所の審理を経て、妻が成年後見人に選任されました。妻は、相続放棄の手続をすることができました。
02
保佐事例
認知症の母と同居する
息子が財産処分
○ 本人の状況:認知症
○申立て人:長男 ○後見人:長男
ひとり暮らしをしていた本人が買い物の際に1万円札を出したか
5千円札を出したか分からなくなるなど認知症の症状が進み、別居していた長男と同居することになりました。そこで本人が今まで住んでいた自宅の土地・建物を売却することになりました。
長男は、保佐開始と、土地・建物を売却する代理権付与の申立てをしました。家庭裁判所の審理を経て保佐人に選任され、代理権も与えられた長男は、土地・建物の売却手続きをすることができました。
03
補助事例
認知症の母の契約を
娘がチェック
○ 本人の状況:認知症
○申立て人:次女 ○後見人:次女
本人は最近、家事での失敗が多くなり、さらに、同居する次女の留守中に、訪問販売員から必要のない高額な商品をいくつも購入してしまうなど軽度の認知症の症状が見られるようになりました。
次女は補助の開始と、高額な商品を購入する際の同意権付与の申立てをしました。家庭裁判所の審理を経て補助人に選任され、同意権も与えられた次女は、本人が高額な商品を購入した場合、その契約を取り消すことができるようになりました。
04
任意後見事例
娘がアパート経営
○ 本人の状況:脳梗塞による認知症 ○申立て人:次女 ○後見人:次女 ○任意後見監督人:弁護士
本人は長年にわたりアパート経営をしていましたが、判断能力が低下する将来に備え、長女との間で任意後見契約を結びました。数ヶ月後、本人は脳梗塞で倒れて重い認知症の症状もあらわれました。
長女は任意後見監督人選任の申立てをしました。家庭裁判所の審理を経て監督人に弁護士が選任され、長女が本人に代わりアパート管理を含む財産管理などを行い、弁護士がそれを監督するようになりました。
成年後見人の仕事
成年後見人など(成年後見人・保佐人・補助人)には、主に本人の配偶者や親族のほか、弁護士・司法書士・社会福祉士・税理士など法律や福祉の専門家や、法律や福祉に関する法人が選ばれます。
成年後見人などの主な仕事
成年後見人などは、本人の医療・介護・福祉など、身のまわりの生活状況にも目を配りながら本人を保護・支援します。しかし、成年後見人などの職務は本人の財産管理とサービス利用や施設入所の契約などの法律行為に関するものに限られており、食事の世話や実際の介護などは、一般に成年後見人などの職務ではありません。
成年後見人などになれない人とは
未成年者や破産者、また本人に対して訴訟をしたことがある人やその配偶者や直系親族、以前に成年後見人などを辞めさせられたことがある人などは、成年後見人などになることができません。